給与? それとも 外注費? 7つの判定基準

給与にすべきか、外注費で良いのか、悩むことがあるのではないでしょうか?
経営者にとっては、給与よりも外注費の方がメリットがあります。できれば外注費で処理したいところですよね。

給与と外注費の区分は判断が難しいケースもあり、見解の相違が出やすい部分なので注意が必要です。当初は外注のつもりでお願いしていたのに、いつの間にか実態が雇用になっていたというケースもあります。

税務調査の際には、「外注費で処理されているものの中に、給与に該当するものは無いか?」という視点でほぼ必ずチェックされます。
取り扱いを誤ると、延滞税や加算税を含め大きな追徴税額が発生する部分ですので、記事を最後まで読んでチェックしてみましょう!

給与と外注費の基礎知識

給与とは?

雇用契約、もしくはこれに準ずる契約に基づいて支払われる対価で、会社で働く従業員などが労働の対価として、使用者が労働者に支払う通勤手当などの手当を含む全てのものをいいます。
労働基準法では、給与のことを賃金と呼びますが、賃金・給料・手当・賞与などの名称の如何を問いません。

外注費とは?

請負契約、もしくはこれに準ずる契約に基づいて支払われる対価で、会社の業務の一部を外部の業者に委託した費用のことです。

給与と外注費の税務上の違い

「給与」と「外注費」では、税務上の取り扱いが大きく異なります。

給 与 外 注 費
社会保険の会社負担 必要 不要
源泉徴収 必要 不要
(例外あり)
消費税の控除
(本則課税の場合)
無し 有り

「外注費」の方が、会社側としては有利になります。
「給与」になるか「外注費」になるかは、形式上と実態を総合的に勘案して判定することが必要です。

給与・外注費 7つの判定基準

給与所得者なのか事業者なのかを区分する基準が、国税庁の消費税基本通達に個人事業者と給与所得者の区分として掲載されています。
それによると、事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうとあり、区分が明らかでないときの例として4項目を挙げ、総合勘案して判定すると記載されています。

ここではもう少し具体的に7つの判定基準として列挙してみます。
※1つでも該当したら必ず外注費として認められる、というわけではありませんので、ご留意下さい

契約内容

請負契約が結ばれていれば、外注費になります。
雇用契約が結ばれていれば、給与です。
しかし、契約書があれば良いというわけではありません。税務調査の際には「業務の実態」など実質的な内容で判断されますので、注意が必要です。

代替性の有無

例えば、請け負った作業者本人が何らかの理由で作業に従事できない場合に、その作業者が他の作業員を手配して、他の作業員が代替して作業を行うことができるのか?
その際の報酬は、他の作業員が従事した報酬も作業者本人に対して支払われているか?
という「業務の実態」で判定します。
代替できるものは、外注費になります。

指揮命令監督の有無

請け負った側が自ら進行手順を決めて業務を行うのであれば、外注費になります。
指揮・命令・監督が発注元にある場合は、外注費ではありません。

時間的な拘束の有無

作業内容に応じて報酬が支払われる場合は、外注費になります。
時間的な拘束(作業時間の指定や、作業時間単位で報酬を計算するなど)が行われるようであれば、給与です。

請求書の有無

外注先が自ら請負金額を計算し、請求書を作成しているのであれば外注費に該当します。
請求書が無かったり、発注元が工数計算をして請求金額を出して支払っている場合には、給与とみなされる可能性が高くなります。

未引き渡し商品等に対する報酬の有無

納品が無かったものに対する支払いが行われないのであれば、外注費に該当します。
未完成品や不可抗力のため滅失してしまった場合でも報酬が支払われるようであれば、給与です。

用具・材料・移動手段提供の有無

材料や用具等を、作業者本人が負担していれば、外注費になります。
会社支給の場合には、給与です。

税務調査で外注費が否認、どうなる?

税務調査により、外注費として支払っていた600万円(月額換算50万円)が否認されて給与であると判断された場合について考えてみましょう。
消費税は、原則課税であったものとします。

源泉税の徴収漏れは、141,700円×12月=1,700,400円。
(※扶養控除の用紙未提出扱いになるので乙欄(平成30年)の税額)
消費税の納税額は、500,000円×8/108×12月≒444,300円

1年間の合計は、2,144,700円になります。

否認されると、様々な問題が生じてきます。
源泉税は、事業主が預かって支払うべき税金ですが、1,700,400円は請負→雇用の扱いになった人に既に支払い済みです。請求することになりますが、拒絶されてトラブルになる可能性が大きいです。
もし、請負→雇用の扱いになった人が源泉税の支払いを拒絶し、会社で払うこととした場合、その額も給与の扱いになるので、源泉税はより高額になってしまいます。
消費税の444,300円は、会社で負担しなければいけない税額です。

税務調査で過去3年間分否認された場合は、単純合計で6,434,100円にもなり、会社は支払わなければいけません。これらの税額に加えて、延滞税や加算税も加わることになりますが、延滞税や加算税は損金になりません。2019年10月から、消費税率が10%に引き上げられるので、それ以降はより大きな金額になります。

請負→雇用の扱いになれば、社会保険へ加入しなければいけなくなります。東京都の場合で年間約90万円(健康保険・厚生年金保険)の負担増になります。
会社としては、過去に遡って想定外の痛い出費を被ることになります。
目先の利益にとらわれて、安易に外注費にすることは避けた方が良いでしょう。

見極めが難しい時は、最寄りの税務署に相談することをお勧めします。
(最寄りの税務署は、当サイト内の都道府県別リンクから都道府県を選択してご利用下さい)

税務上だけではない、外注費にした際のリスク

形式上は請負契約を締結するなどを行い、外注としてお互いに合意していたとしても、実態により給与支給者とされてしまう場合があります。

例えば、業務遂行中のケガなどや、会社から一方的に契約解除された場合に、「実態は給与支給者であった」と申し出が行われるケースです。
認められてしまうと、労働基準法や労働者災害補償保険法の適用を受けることとなり、会社の責任が問われる可能性があります。

実態が給与支給者に近い場合は、外注費の扱いにしない方が安全です。

外注費で処理して否認されない方法とは?

請負契約を交わしていても、会社に常駐して社員と同様に働いている人の場合、実態に照らし合わせて給与と認定される可能性がとても高いです。

どうしても外注費で処理したい場合には、支払先に法人設立をしてもらいましょう!
法人への支払であれば、業務委託費として扱ってもらえますし、上記の外注費にした際のリスクも回避できます。

法人であれば、形態は何でも構いません。
代表的な法人形態は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4形態がありますが、有限責任でコストが安く設立できるのは、合同会社です。

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