社長へ支払う給与には、ルールがあります。
一定の要件に該当する支払でないと「損金」の額に算入出来ません。
「損金」として認められるうちの1つが「定期同額給与」です。
目次
「定期同額給与」とは?
毎月の支給額が同額の役員報酬のことです。
一度決めたら、途中で支給額を増やしたり減らしたり、支払わなかったりしてはいけません。途中で支給額を変更すると、損金計上が認められなくなります。
※「定期同額給与」に関しては、税務署への届け出は不要です。
「定期同額給与」の考え方
毎月同額の支給
(単位:万円)
50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
毎月同額の役員報酬は、損金に算入されます。
給与改定
(単位:万円)
70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | |||
50 | 50 | 50 | |||||||||
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
会計期間開始の日(事業年度開始の日)から3ヶ月の間の改訂で、支給額改訂前後の各月の支給額が同額であれば、「定期同額給与」に該当し、損金に算入されます。
上の例は増額の場合ですが、減額の場合も同様です。
株式会社の場合は、定時株主総会の決議が必要です。
給与改定(臨時改定事由)
「臨時改定事由」に該当する場合の役員に係る定期給与の額の改定であれば、損金に算入されます。
「臨時改定事由」とは、その法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更、その他これらに類するやむを得ない事情がある場合とされています。
つまり、新しく役員になったり外れたりした場合や、代表になったり代表から外れた場合が該当します。
その他、役員が入院した場合など特別の事情があれば認められます。
経営悪化(業績悪化改定事由)による減額
著しい経営悪化により、やむを得ず減額した場合には認められます。
(単位:万円)
80 | 80 | 80 | 80 | 80 | 80 | ||||||
50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | ||||||
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
減額した場合も、支給額改訂前後の各月の支給額が同額であることが必要です。
「定期同額給与」にならず、否認されるパターン
期首まで遡及して増額
4月に遡って役員給与の増額する事を決定し、7月に4~6月の増額分として60万円を一括支給した場合は、60万円は損金として認められません。
(単位:万円)
20 | 20 | 20 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 | 70 |
50 | 50 | 50 | |||||||||
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
改訂要件に該当しない60万円は、損金不算入となります。
経営悪化と認められない場合
上記の「減額要件(経営悪化による減額)」で示した例で、経営悪化と認められない場合には、減額した10月以降の50万円が定期同額給与に該当するとされます。
(単位:万円)
30 | 30 | 30 | 30 | 30 | 30 | ||||||
50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
ピンク色で示した部分、30万円×6ヶ月=180万円が、損金不算入となりますので、経営悪化による減額であっても安易に減額するのは危険です。
「一時的にお金が足りない」「目標の利益に達しない」といった程度の理由で減額した場合も、同様に否認されます。
後の税務調査で否認されると痛い損失を被ることになりますので、減額する際には税務署へ相談してから決定する事をオススメ致します。
毎月バラバラに払ってしまった場合
(単位:万円)
60 | 65 | 60 | |||||||||
40 | 40 | 35 | 40 | 45 | |||||||
15 | 20 | 15 | |||||||||
20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 | 20 |
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
この様にバラバラに役員報酬を支払ってしまった場合、役員報酬が決められた経緯が明確に残っているかが問題です。
不足分を毎月未払計上した上で、毎月一定額が支払われなかった理由を説明し証明出来るか。
理由が説明出来ない場合には、定期同額給与として損金の額に認められる金額は毎月20万円となり、ピンク色の部分は全て損金不算入となって法人税が課せられる可能性があります。
決算時に気付いて期末に未払計上をすればどうにかなるのではないか? その際に参考になりそうな記事がありましたのでリンクを貼っておきます。<期末における役員給与の未払計上・・・税務調査官が着目する理由>
Q&A
今月は資金繰りが厳しいので未払い・・・認められる?
1月分の役員報酬は1月中に、2月分の役員報酬は2月中にと、毎月同額を支払って役員報酬を計上しなければ損金として認められません。
会社にお金が無く支払が出来ない時でも損金として認めてもらうためには、未払計上(一部不足の場合は不足分を未払計上)を行い、毎月一定額を役員報酬として計上することが必須です。
借 方 | 貸 方 | ||
---|---|---|---|
役員報酬 | ××× | 未払費用 | ××× |
預り金 | ××× |
役員報酬支払の仕訳は、各月の仕訳として入っていなければいけません。
さらに会社が給与を払った痕跡を残す為にも、役員報酬から預かった源泉所得税等は必ず納付しましょう。
給与の改定はいつなら出来る?
会計期間開始の日(事業年度開始の日)から3ヶ月の間の増額または減額の改訂であれば、損金に算入されます。
株式会社の場合は、定時株主総会の決議が必要です。
支給額改訂前後の各月の支給額が同額であれば、「定期同額給与」に該当し、損金に算入されます。