会計士と税理士の違いはなに? 決算申告業務を依頼するときの参考に

会計士さんと税理士さんの違いについて、説明できますか?

世間の認識では、税理士=会計士 と思っている方が多いそうです。

実際に社長さんが顧問税理士のことを言うとき、「会計士の先生は・・・」と言われる方と私も何人か会いましたので、違いがよく分からないという方は意外と多いのかもしれません。

この記事では、公認会計士と税理士の違いについて、なるべく明確に分かるように、色々な角度から比較してまとめてみたつもりです。

中小零細企業や個人事業主の方が、決算申告業務を依頼するときに、どの専門家に依頼するのが自分に合うのかの参考にして頂ければと思います。

公認会計士と税理士の違い

会計士(公認会計士)と税理士は、それぞれ資格が異なり、専門領域が異なります。

一言でいうと、公認会計士は「監査」税理士は「税務」が専門です。

それぞれの違いを比較してみましょう!

公認会計士

公認会計士法 第1条 により、公認会計士の使命は、

「公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。」

と掲げられいます。そして、

  1. 財務書類の監査又は証明をすること公認会計士法 第2条1項
  2. 財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずること公認会計士法 第2条2項

ちょっと堅苦しい文面ですね!

ザックリ言うと、会社が作った決算書が正しいかチェックする仕事です。

具体的には、企業が作成した財務諸表が、第三者の立場から正しく作成されているか証明する監査業務と、決算書などの作成および財務に関する相談が主な業務です。

その目的は、投資家や金融機関などが、誤った決算書を元に判断しないように信頼性を確保することで、上場企業のような規模の大きな企業が対象になります。

税理士

税理士法 第1条 により、税理士の使命は、

「税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」

と掲げられています。そして、

  1. 税務代理税理士法 第2条1項1号
  2. 税務書類の作成税理士法 第2条1項2号
  3. 税務相談税理士法 第2条1項3号
  4. 税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務税理士法 第2条2項

また堅苦しい文面ですねぇ。

ザックリ言うと、会計帳簿を作って税金計算をして申告することと、税に関するアドバイスをする仕事です。

具体的には、個人や法人の納税者に代わって税金の計算を行い、税務書類を作成して申告を行ったり、税金に関する相談にのることが主な業務です。

さらに、納税者の税金を計算する前段の、会計帳簿の記帳代行および決算書類の作成も行います。

※参考:Web税理士法 – 税理士の業務

資格取得の方法から違いを比較

次に、資格を取得するまでのルートを比べてみましょう!

公認会計士の場合は、国家試験に合格することで資格取得に至ります。一定の条件を満たせば一部の科目が免除されますが、基本的に全科目免除になる方法はほぼありません。

税理士の場合も、一定の条件を満たせば一部の科目が免除されますが、弁護士、公認会計士、税務署に長期勤務した者は、申請により税理士になれる点が大きな違いです。

公認会計士

公認会計士になるには、全部で9科目の試験に合格しなければなりません。

以下の場合は、試験の一部が免除されます。(非常に複雑なので一部のみ抜粋)

  • 大学院で、商学にに属する科目で博士の学位を取得により、短答式全部および論文式の会計学及び経営学を免除
  • 大学院で、税法系に属する科目で博士の学位を取得により、論文式の企業法を免除
  • 税理士(弁護士を除く)資格を有する者は、短答式の財務会計論、論文式の租税法を免除
  • 司法試験合格者は、企業法および民法を免除

など。

出典:公認会計士試験に関するQ&A 試験科目の免除について公認会計士試験の免除制度解説

税理士

税理士になるには、税理士の国家試験である会計学2科目と税法3科目の合計5科目に合格しなければなりません。

以下の場合は、試験の一部が免除されます。

  • 弁護士は、全科目免除
  • 公認会計士は、全科目免除(2017年4月以降の合格者は税法に関する研修必要)
  • 税務署に10年または15年以上勤務した国税従事者は、税法3科目が免除
  • 税務署に23年または28年以上勤務し、指定研修を終了した国税従事者は、会計2科目が免除
  • 大学院に進学し、修士または博士の学位を授与された者は、一部科目が免除(細かいのでザックリした説明です)

出典:日本税理士会連合会税理士試験科目の免除について税理士の登録

国家試験(受験勉強)科目から違いを比較

次は、公認会計士と税理士の試験科目を比べてみましょう!

公認会計士と税理士は試験の科目が異なるので、学ぶ内容が異なります。

比較すると、公認会計士の業務に必要とされていることと、税理士の業務に必要とされていることの違いが見えてきます。

公認会計士は、簿記の仕組みや財務諸表の理論をベースに、管理会計および監査が加わり、監査に必要な税法と付随する内容の試験科目になっています。

税理士は、簿記の仕組みと財務諸表作成のほか、法人税や所得税をベースに他の税法が加わった試験科目になっています。

公認会計士

公認会計士の試験は、短答式試験(一次試験:マークシート)と、論文式試験(二次試験:筆記)があります。

一次試験・二次試験の科目を合わせて、どの様な内容を学習しているのでしょうか?

一次試験を「①」、二次試験を「②」として、内容を表にまとめてみました。

 

必須科目:一次試験4科目、二次試験4科目

試験科目 勉強している内容
会計学② 財務会計論① 簿記のルールや仕組み、「企業会計原則」等の会計基準、会計基準の内容及び理論的背景、理論的な対立等の会計理論について学んでいる。
管理会計論① 経営者が将来の企業のあり方を計画したり、その成果が期待通りに進んでいるかを管理するための情報の収集・分析・報告を行うための、原価計算を中心とした会計システムについて学んでいる。
監査論①② 大企業が公表する決算書の「財務諸表監査」を担うため、公認会計士が備えるべき価値観を含め、財務諸表監査にまつわる様々なルールの内容や背景について学んでいる。
企業法①② 「企業法」の科目の中心は会社法。主に株式会社の設立・運営から消滅に至るまでの諸規定、および商法と金融商品取引法等について学んでいる。
租税法② 監査証明業務を行うために必要な、法人税法の計算・基礎理論を中心に、所得税法、消費税法等の構造的理解が問われる問題、および基礎的な計算問題が出題されるので、その範囲を学んでいる。

 

選択科目:4科目の中から1科目を選択

試験科目 勉強している内容
経営学 企業及び企業経営のあり方を研究する学問で、経営戦略論、モチベーション理論、リーダーシップ論、コーポレート・ガバナンス論、ファイナンス理論等を学んでいる。
経済学 企業や消費者の経済行動や、個々の財・サービスの需給に対する分析を行うミクロ経済学と、一国の経済全体または世界経済全体を分析するマクロ経済学について学んでいる。
民法 売買契約等、日常行う行為を規律する法律を学び、条文の解釈や学説の対立点の理解を深めている。
統計学 データ解析やファイナンス理論に必要となる、記述統計、確率、推測統計、相関・回帰分析等について、データを用いた計算方法や確率を利用した統計的評価方法を学んでいる。

 

税理士

税理士の試験は、試験科目全11科目の中から、必須と選択を合わせて5科目に合格することが要求されています。

どの様な内容を学習しているのでしょうか?

必須科目、選択必須科目、選択科目の内容を表にまとめてみました。

 

会計科目<必須>

試験科目 勉強している内容
簿記論 複式簿記の原理、記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記、工業簿記、企業経済活動を秩序的に記録・計算する手続きを学んでいる。
財務諸表論 帳簿記録された内容を利害関係者に報告するために作成する「財務諸表」の作成手続きに関する内容で、会計原理、企業会計原則、企業会計の諸基準、会社法中計算等に関する規定、会社計算規則、財務諸表等の作成方法に関する規則、連結財務諸表の作成方法に関する規則について学んでいる。

 

税法科目<必須選択:1~2科目選択>

試験科目 勉強している内容
法人税法 法人が事業活動を通じて得た所得について課される国税について学んでいる。
所得税法 個人が1年間に得た所得(利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得)に対して課される国税について学んでいる。

 

税法科目<1~2科目選択>

試験科目 勉強している内容
消費税法 商品・製品の販売サービスの提供などの取引に対して課税される国税および地方税について学んでいる。
酒税法 アルコール分1%以上の飲料である酒類に対して課税される国税について学んでいる。
事業税 法人または個人の事業活動に対して課税される地方税について学んでいる。
住民税 都道府県や市区町村が行うサービスの諸経費をまかなうために徴収する地方税について学んでいる。
相続税法 相続・贈与などの際に、財産を取得した者に課される国税について学んでいる。
固定資産税 土地・家屋・事業用償却資産の所有者に課税される地方税について学んでいる。
国税徴収法 納付すべき国税が納付されなかった場合などに、強制徴収するための手続きについて必要な事項を定めた法律について学んでいる。

※消費税法と酒税法、事業税と住民税は、それぞれどちらか1科目のみ選択

違いのまとめ

公認会計士と税理士、それぞれの法律と試験科目から、違いが見えてきましたね!

公認会計士は、「監査」を行うために必要な範囲の税法と会計等に関する知識を有すると認められた人に資格が与えられ、「会計監査」が主な業務です。

税理士は、「税務」に関する相談と税務申告書類作成の代理を行うために必要な、税法と会計に関する知識を有すると認められた人に資格が与えられ、「税務と会計」が主な業務です。

弁護士および公認会計士資格を有する人は、税理士試験全科目免除で「税理士」になれます。
資格取得のための試験勉強科目にのみ焦点を当てて見ると、試験免除で「税理士」資格を取得した場合は、税法に詳しくない可能性があります。特に、弁護士になるための司法試験の科目には、簿記や財務諸表といった会計学に関するものは無く、唯一ある「租税法」は選択科目です。会計学や租税法を学んでいなくても税理士の登録が出来てしまうという点は不思議です。

とはいえ、「税理士」の肩書きを掲げて業務をしている先生方は、資格取得後に必要な知識をしっかり習得しているはずです。

資格取得の経路からだけでは一概には言えませんが..、その様な違いがあります。

中小零細企業や個人事業主の方が、決算申告業務を専門家に依頼するときの参考にして頂ければと思います。