合同会社に適した事業について、まとめました。
「株式会社」を設立するべきか、費用の安い「合同会社」にするべきか・・・と悩まれている方は、参考にして頂けたらと思います。
目次
合同会社のメリット
株式会社と比較した場合の合同会社のメリットは、以下があげられます。
- 設立費用が安く、簡単に早く設立が出来る
- 株主総会や取締役会等が無いので、書類作成の手間がかからない
- 迅速な意思決定と機動的な経営が出来る
- 役員の任期が無いため、定期的な選任手続きの手間と、再選による登記費用がかからない
- 決算公告義務が無いため、事務手続き費用がかからない
- 合同会社の組織構成を自由に定めることが出来る
- 出資比率に関係なく平等な発言権、出資者同士で自由に取り決めが出来る(資本に隷属しない会社を作る事が可能)
- 決算の承認手続きが不要なため、決算時の手間が減る
- 利益の配当は、出資比率に関係なく配分することが出来る
合同会社のデメリット
株式会社と比較した場合の合同会社のデメリットは、以下があげられます。
- 上場が出来ない(但し、株式会社に組織変更すれば可能)
- 創設されて10年少々なので、まだまだ知名度が低い
- 第三者に出資だけ依頼することはできない
合同会社と株式会社の違いを再確認
「株式会社」は、「出資者」と「経営者」が別々である事が前提の会社形態で、上場会社にも適応できる会社形態です。
「合同会社」は、出資者=経営者 であることが前提の会社形態です。
違いについて詳しくは、次の記事にまとめてありますので、宜しければご覧下さい。
合同会社(LLC)と株式会社、違いは何か?
合同会社に適した事業
「株式会社」が良いのか「合同会社」が良いのか?
上記「合同会社と株式会社の違いを再確認」に書いた様に、「会社形態」に違いがあります。
書籍やネット上にも「適した事業」という形でよく書かれていますが、本来は「会社形態の違い」に着目して適した方に決めるべき内容です。
そうは言っても「株式会社の方がイメージが良い」といった多くの方々の根拠の誤ったイメージもあり、無視する事も出来ず迷うところです。
その辺を考慮して、幾つか取り上げてみたいと思います。
会社の種類を前面に出さない業種
「合同会社」が創設されて10年少々で、まだまだ知名度が低いことから信用度が低いと思われてしまう事がある様です。根拠無くイメージだけで「株式会社の方が信用出来る」と思い込んでいる方々も多くいらっしゃいます。
その点を考慮すると、社名を全面に出さない業種は向いていると言えます。
例えば、美容室・理容室、鮮魚や野菜・フルーツ販売等の小売業、介護関連事業、学習塾などは、社名以外の看板を掲げて営業している業種です。
知名度に関しては「合同会社」の登記数が今後増えて広く認知されることで、近い将来改善されてくると思われます。
合同会社の登記数の推移についてはこちらの記事に書いてあります。
1人社長、家族出資、シニアや主婦の起業
設立費用を安く抑え、定期的な役員の選任の必要も無く、登記のコストがかからないのでオススメです。
不動産の賃貸経営などにも最適です。
社名を全面に出して「合同会社? んっ??」と思われるという不安がある場合には「株式会社」の選択も有りです。
節税を目的とした会社
資産管理会社等、法人格があれば良いだけの会社の場合も、設立費や維持コストがかからない合同会社が適しています。
著名人が代表になる場合
社名を全面に出して事業を行う場合でも、著名人が代表になる場合は、会社の種類は問題にならないはずです。
将来的に第三者からの出資を募って、大きな資本にしての運営を考えているのであれば「株式会社」の方が良いでょう。
出資比率に関係無く平等な発言権を必要とする場合
- 異なる能力・技術・ノウハウを持った人たちが連携して新しい事業を行う
- 起業家が共同で新しい事業に取り組む
- 地域の商店街の店舗が連携した事業
- 農家が連携した協同直販や、販路拡大目的の事業
- 企業の共同研究開発
- 個人が数名で行う共同事業
- 発言権を平等にする必要がある事業
- 子会社
- 合弁会社
合同会社という会社形態の特徴である、出資比率に関係のない平等な発言権や、出資者同士で自由に取り決めが出来る点を活用出来たり(資本に隷属しない会社)、迅速な意思決定と機動的な経営が出来る点を活用出来る例です。
「資本に隷属しない会社」の実例
東日本大震災の被災地である宮城県石巻市桃浦漁港に設立された法人です。
被災で全てを失ってしまった事がきっかけで設立されました。
15人が各人30万円ずつ(合計450万円)の出資と、協力を求められた水産物卸会社が440万円を出資し、合計で890万円の資本金で運営を開始した合同会社です。
株式会社で設立してしまうと、水産物卸会社が49.4%の議決権を有する事になり、個人の意見が殆ど反映されない事になりかねませんが、合同会社にする事で出資比率に関係なくそれぞれが平等な発言権を持てる組織として運営されます。
取引先に法人化を依頼された場合
取引先の経理(税務)の都合で、「外注費」として処理したいという場合があります。
請負契約を交わしていても、取引先の会社に常駐して社員と同様に働いている人の場合、税務調査が入ると実態に照らし合わせて「給与」であると認定されてしまう場合があるのです。
[関連記事]給与? それとも 外注費? 7つの判定基準
法人への支払であれば「業務委託費」になるので、給与認定をされてしまうことはありません。
その様な目的であれば、設立コストが一番安く、運営にも手間がかからない、合同会社が一番最適です。
まとめ
将来的に第三者から出資を集めて、大きな資本にして運営を考えているのであれば、「株式会社」を設立した方が良いです。
自分1人だけの出資や家族など身内での出資で、出資割合に依存せずに自由に運営を行いたい場合には「合同会社」を設立した方が良いです。
但し、社名を掲げて行う事業で「株式会社の方が信用出来る」という考えの人に対応したい場合には、「株式会社」を選択した方が良いでしょう。
また、特定の複数人による出資で、出資比率に関係なく平等な発言権を必要とする共同事業を行いたい場合には、「合同会社」の設立が適しています。