労働保険とは、どのような保険でしょうか?
適用事業所の要件や、新規加入手続きと、従業員の雇用や退職時の手続きについてまとめました。
目次
労働保険とは
労働保険は「雇われて働く人を保護するための保険」で、公的保険の一つです。
「雇用保険」と「労災保険」を合わせて、「労働保険」と呼ばれています。
労働保険は、 国の制度で加入が義務付けられている保険です。
労働者を雇用する事業所は、加入しなければいけないことになっています。
雇用保険
雇用保険は、従業員が失業した場合に、生活費や就職活動を支援するために給付金が支給されるもので、いわゆる「失業保険」のことです。
この他に、
- 高年齢雇用継続給付(60歳以上の人の雇用機会の継続を援助)
- 育児・介護休業給付
- 教育訓練給付(仕事に必要なスキルを伸ばすために行く英会話やパソコン教室等の学校費用)
等があります。
保険料は、事業主が半分負担します。
労災保険
労災保険は、従業員が、通勤中や業務上のケガ・病気により働けなくなったとき、または死亡したときに、本人や遺族に対して補償するものです。
- 療養(補償)給付(労災指定病院等で治るまで必要な治療を受けられる)
- 休業(補償)給付(働けなくなった場合に一定の補償が受けられる)
- 傷病(補償)年金
- 障害(補償)給付
- 遺族(補償)給付(死亡した場合に遺族に支給)
保険料は、事業主が全額負担します。
適用事業所の条件
労働保険(雇用保険・労災保険)は、従業員を1人でも雇っていれば「適用事業所」となるので、「新規加入手続き」を行わなければいけません。
加入義務は、事業所単位です。
加入できる人は労働者のみです。人を雇っても、法人の代表者や取締役は、労働者ではなく雇用関係が成立しないので加入することが出来ません。
詳しくは、労働保険対象者の範囲をご覧下さい。
新規加入手続き
労働保険(雇用保険・労災保険)の新規加入手続きには、順番があるので注意が必要です。
- 管轄の労働基準監督署に提出する書類 : 「労働保険 保険関係成立届」
- 管轄のハローワークに提出する書類 : 「雇用保険適用事業所設置届」+「労働保険 保険関係成立届の控え」
労働基準監督署に提出した書類の控えを持って、ハローワークへ手続きに行きましょう。
加入対象となる労働者
雇用保険
雇用されている労働者(従業員)が対象です。
- 1週間の所定労働時間が、20時間以上ある
- 31日以上継続して雇用の見込みがある
これら2つの条件を満たせば原則とて、正社員、パート、アルバイト、派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、加入が義務付けられています。
例外で除かれる者
- 季節的に雇用される者で、4ヶ月以内の期間を定めて雇用
- 季節的に雇用される者で、1週間の所定労働時間が30時間未満
- 昼間学生
取締役は、原則として被保険者となりません。しかし、取締役であっても労働者的性格が強く雇用関係があると認められる者は認められる場合があります。
詳しくは、労働保険対象者の範囲をご覧下さい。
労災保険
常用、日雇、パート、アルバイト、派遣等、名称や雇用形態にかかわらず、労働者として賃金を受ける全ての者が対象です。
代表権等を有する役員は、労災保険の対象になりません。ただし、例外規定があり労働者として取り扱われる場合があります。詳しくは、労働保険対象者の範囲をご覧下さい。
労働者を雇用(離職)した時の手続き
雇用保険
事業所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に、次の書類の提出が必要です。
新たに労働者を雇い入れた都度
雇用保険被保険者が離職した場合
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 離職証明書(失業給付額等の決定に必要)
労働保険
社員を初めて雇うときに手続きを行います。その後の労働者ごとの届け出は必要ありません。
提出書類のまとめ
労働基準監督署
提出書類 | 提出期限 | 備 考 |
---|---|---|
適用事業報告 | 従業員を雇い入れた時から遅滞なく | 臨時労働者、季節労働者、パートタイム労働者、アルバイト等を含む。従業員が同居の親族だけの場合は不要。 |
労働保険 保険関係成立届 | 労働保険関係が成立した日の翌日から10日以内 | この用紙の控えは公共職業安定所に提出。 履歴事項全部証明書・事業所の賃貸借契約書が必要。 |
就業規則・就業規則届・意見書 | 常時10人以上の従業員を使用する場合は遅滞なく | 就業規則に対する労働者の代表の意見書が必要。 |
時間外労働・休日労働に関する協定届 | 時間外・休日労働させる場合には速やかに |
公共職業安定所(ハローワーク)
提出書類 | 提出期限 | 添付書類 |
---|---|---|
雇用保険適用事業所設置届 | 雇用保険適用事業所となった日の翌日から10日以内 | ①履歴事項全部証明書(登記簿謄本) ②事業所の賃貸借契約書等、実在を確認できる書類 ③事業実態が確認できる書類 |
雇用保険被保険者資格取得届 | 雇用保険適用事業所となった日の翌日から10日以内 | ①労働者名簿 ②出勤簿またはタイムカード ③賃金台帳 |
雇用保険被保険者資格喪失届
離職証明書(失業給付額等の決定に必要) |
被保険者でなくなった日の翌日から10日以内 |
関連リンク
このページで紹介しきれない届出書や説明書などは、以下のサイトにあります。
- 労働保険徴収関係リーフレット一覧(厚生労働省)
※継続事業 : 事務所・商店・工場等、建設事業でない一般事業所用
※一括有期事業 : 建設事業まは立木の伐採の事業用 - 労働基準法関係主要様式(厚生労働省)
- 雇用保険手続支援
- ハローワークインターネットサービス 帳票一覧
- 電子政府の総合窓口(雇用・福利厚生・社会保険)