求人情報にも記載されている「雇用形態」。
正社員(正規社員)、契約社員、派遣社員、パートタイム労働者、アルバイト、嘱託社員、短時間正社員などと色々あります。
「正規社員」に対して「非正規社員」という言葉があり、「直接雇用」と「間接雇用」という区分もあります。
何がどの様に違うのでしょうか?
雇用形態の違いをまとめました。
目次
雇用形態について
雇用形態とは?
雇用形態とは、会社と労働者が雇用契約を締結して採用する際に使用している「種別」のことです。
正社員(正規社員)、契約社員、派遣社員、パートタイム労働者、アルバイト、嘱託社員、短時間正社員などと色々がありますが、労働基準法にはこのような区別はなく、全て「労働者」とされています。
これらの名称は、企業が労働者に条件をわかりやすく伝えるために、便宜的に使い分けている名称といえます。
多様な雇用形態が生まれた背景には、企業側には人件費節約や解雇リスクの少ない非正規雇用の割合を増やしたいという思いなどがあり、働き手の側には自分のライフスタイルに合った働き方をしたいという人が増えたことがあるようです。
「自分の都合のよい時間に働きたいから」という理由で、正社員ではなく非正規の職員・従業員になる人の割合が、男女共に近年大幅に増加しています。
参考:総務省統計局による労働力調査(2019年2月15日公表)
採用する側も、就職する側も、正規社員以外の様々な「雇用形態」の中から、お互いに一番有利な条件を選択することができる様になったといえるでしょう。
「正規社員」と「非正規社員」
「正規社員」や「非正規社員」という用語もありますが、これらも法律では決められていません。
「正規社員」とは、一般的に
- 会社に直接雇用されている
- 雇用期間の定めが無い
- 労働時間は、基本的にフルタイム勤務
この3つの条件を全て満たしたものとされています。
つまり、これらの条件が1つでも異なる雇用形態は、全て「非正規社員」ということになります。
「直接雇用」と「間接雇用」
「直接雇用」は、勤務先の企業と直接雇用契約を結んで仕事を行い、その対価を勤務先の企業から直接もらう働き方です。
「間接雇用」は、勤務先と労働の対価である給与をもらう企業が異なる働き方です。具体的には、雇われる会社(派遣元)と実際に働く会社(派遣先)が異なる雇用形態である派遣社員が該当します。
雇用形態の種類
雇用形態を表す名称は色々ありますが、主に ①フルタイムの労働か短時間労働か、②勤務先に直接雇用されているか否か、③雇用期間の定めが有るか否か、といった内容の組み合わせの違いによるものです。
前述したとおり法律上は全て「労働者」になります。
雇用形態が多様になったことで、採用する側にとっても有利な雇用形態で求人することが出来ますし、雇用される側にとっても自分のライフスタイルに合った雇用形態を選ぶことができる様になりました。
それぞれの違いについて、主要なものを解説していきます。
正社員
正社員とは、「正規に雇用された社員」のことで、「正規社員」ともいわれます。
- 会社に直接雇用
- 雇用期間の定めが無い
- 労働時間は、基本的にフルタイム勤務
一般的に、勤務時間や仕事上の責任などで拘束が多い分、賃金などが優遇されます。
契約社員
契約社員とは、契約期間に定めのある労働契約(有期労働契約)を結んだ社員のことです。仕事の内容は、正社員と同様か、専門性の高いものとなります。
- 会社に直接雇用
- 雇用期間が定められている
- 労働時間は、基本的にフルタイム勤務
- 1回に契約する期間は、原則として上限は3年
契約期間
労働契約の際に、あらかじめ雇用期間を定めます。
1回当たりの契約期間の上限は、原則として3年です。
契約期間の満了によって労働契約は自動的に終了することとなります。
契約期間の例外
1回当たりの契約期間の上限は原則として3年ですが、次のものについては例外とされています。
- 一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの(有期の建設工事等は、その期間)
- 厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との労働契約(上限は5年)
- 満60歳以上の労働者との労働契約(②を除く)(上限は5年)
参考①:労働契約期間の上限について(PDF)
参考②:上記資料掲載ページ
無期労働契約への転換
2013年4月に改正された労働契約法により、契約社員等の有期雇用契約が通算して5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールが定められています。
この改正により会社側は、5年以上同一の社員を契約社員として採用し続けると、無期限に採用し続けなければいけなくなる可能性が出ることになりました。
逆に労働者側は、5年を超えて契約社員として働いている場合、無期転換申込権が発生しているので、会社に申請することで無期労働契約に転換してもらうことができます。
但し、会社側が「定年後引き続き雇用される有期雇用労働者等」の特例申請をしている場合には、定年後の方は無期転換申込権が発生しない場合があります。
参考①:安心して働くための「無期転換ルール」とは (申込書・受理通知書のサンプル有り|PDF)
参考②:上記資料掲載ページ
派遣社員
派遣社員は、雇われる会社(派遣元)と実際に働く会社(派遣先)が異なる雇用形態です。
1986年7月に労働者派遣法が施行されたことによって始まりました。
- 労働者は、人材派遣会社(派遣元)との間で「労働契約(雇用契約)」を結びます
- 派遣先の会社は、派遣元の会社との間で「労働者派遣契約」を結びます
- 労働者は、派遣先の会社からの指揮命令を受けて働きます
- 労働者派遣法において、派遣労働者のための細かいルールが定められています
- 同じ職場で働けるのは3年まで
- 雇用期間が定められている
契約期間
2015年に改正された労働者派遣法により、これまで上限が定められていなかった26専門業務も含め、派遣社員が同じ派遣先で働ける上限の契約期間が原則3年になりました。
派遣社員が継続して3年以上働きたい場合には、別の派遣先で勤務するか、派遣先と直接雇用関係を結ぶかを選ばなければいけません。
逆に、派遣社員を採用している企業側が、同一の派遣社員に3年以上働いてもらいたい場合には、正社員や契約社員などの形で直接雇用することで、継続して働いてもらうことができます。
参考①:派遣で働く皆様へ
参考②:派遣先の皆様へ
参考③:派遣で働くときに特に知っておきたいこと
参考④:上記資料掲載ページ
お金の流れ
- 派遣先の会社は、人材派遣会社に、派遣社員の賃金と派遣手数料を支払います
- 人材派遣会社は、派遣手数料(派遣手続きに要した費用、研修費、マッチングに要した費用など)を受け取り、派遣社員への賃金を支払います。
パート
フルタイムで働くことが難しい、主に主婦層向けの短時間勤務の業務内容を設定している企業が多い雇用形態の一つです。
パートは、正社員の様に働く「フルタイム」に対する言葉として生まれた言葉で、「パートタイム」を略した言葉であり、パートタイマーとも言われます。
- 会社に直接雇用
- 雇用期間が定められていることが多い
- 一週間の所定労働時間が正社員より短い
パートタイム労働法では、「短時間労働者」について、
「1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」をいう
と定義されています。
※参考:パートタイム労働法2条 注:正式名は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
※パートタイム労働法では、パートタイム労働者のことを「短時間労働者」といいます
アルバイト
アルバイトは、時間的な都合がつきやすい学生やフリーターなどの層を対象としている企業が多い雇用形態の一つです。
「アルバイト」という言葉は、ドイツ語で「仕事」を意味する「Arbeit」から生まれました。
明治時代に学生が学費や生活費を得るために、学業の傍ら従事していた労働のことを、学生の間で隠語として使われていたものが一般に誤って広まったのが始まりの様です。
現在では、学生が勉強のかたわら働く副業や一時的な副業のことを、アルバイトと言うようになりました。
- 会社に直接雇用
- 雇用期間が定められていることが多い
- 一週間の所定労働時間が正社員より短いことが多い
呼び名が「アルバイト」であっても、「1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」であれば、法律的には短時間労働者に該当し、「パートタイム労働法」が適用されます。
パートタイム労働法による定義
「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この条件に当てはまれば、パートタイム労働者となり、パートタイム労働法の対象となります。
「1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」であると、パートタイム労働法で定義されています。
パートタイム労働者を雇用するときは、「パートタイム労働法」に基づいて、公正な待遇の確保や正社員への転換などに取り組むことが義務付けられています。
正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイト、違いのまとめ
正社員 | 契約社員 | 派遣社員 | パート
アルバイト |
|
---|---|---|---|---|
仕事内容 | 通常業務 基幹業務 |
基幹業務 専門業務 |
通常業務 定型業務 専門業務 |
臨時業務 定型業務 |
有給休暇 | 6ヶ月間継続して勤務し、所定労働日の8割以上出勤した場合に付与 | |||
労災保険 | ○ | ○ | ○ | ○ |
雇用保険 | ○ | 次の場合に適用対象となる
|
||
健康保険
厚生年金 |
○ | 次の2つの要件に該当する場合に加入
労働日数と労働時間が4分の3未満であっても、以下の①~⑤全てに該当する場合は加入
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||
育児休業 | ○
勤続1年未満は労使協定による
|
次の2つの要件に該当する場合に取得可能
特別養子縁組の看護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等も対象。 |
||
介護休業 | 次の2つの要件に該当する場合に取得可能
※93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに労働契約の期間が満了し、契約が更新されないことが明らかな場合は取得不可。 |
|||
雇用区分 | 正規雇用 | 非正規雇用 | ||
直接雇用 | 直接雇用 | 間接雇用 | 直接雇用 | |
契約 | 雇用契約 | 雇用契約 | 雇用契約 (派遣元←→労働者) 労働者派遣契約 (派遣元←→派遣先) |
雇用契約 |
契約期間 | 無 | 有 | 有 | 一般的に有 |
参考資料