会社設立や開業にかかった費用の科目と会計処理

会社設立のために支払った費用は、どの様に経理処理すれば良いのでしょうか。

会計上と、法人税法上の考え方がそれぞれ異なります。

設立1期目に全額損金計上してしまう方法と、繰延資産に計上する方法があります。

繰延資産として計上する場合は、範囲に制限があります。

創立費と開業費で処理する方法

会社設立の準備中に支払った費用から、営業開始までにかかった費用は、創立費と開業費で処理します。

創立費にするか開業費にするかは、法人の設立日を境に分かれます。

この方法は、損金処理を次期以降に先送り出来るので、設立当初に赤字になりそうな場合に特に有効です。

仕訳の具体例

[会社設立前の費用]

登録免許税6万円、印鑑セット3万円、司法書士書類作成手数料 40,000円

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
創立費 60,000 未払金 60,000 登録免許税
創立費 30,000 未払金 30,000 印鑑セット
創立費 40,000 未払金 40,000 司法書士手数料

 

[会社設立後~営業開始までの費用]

法人設立届や銀行口座開設のために必要な謄本・印鑑証明書 3,450円、開業準備のために要した交通費 1,000円、名刺印刷代 5,000円

借方科目 金額 貸方科目 金額 摘要
開業費 3,450 未払金 3,450 謄本、印鑑証明書
開業費 1,000 未払金 1,000 交通費
開業費 5,000 未払金 5,000 名刺印刷代

※設立直後で、法人に現金が無く、代表者が立替払いした場合を想定して貸方科目を未払金にしてあります

創立費

「会社設立準備~会社設立前」の間に支出した費用のうち、法人を設立するために要した費用を「創立費」として処理します。

具体的には、定款作成等の設立書類作成にかかる費用、登録免許税、発起人報酬、事務所の賃料、登記に係わる費用、交通費、金融機関等の手数料などです。

創立費は、会社設立日にまとめて計上します。

開業費

「会社設立後~営業開始前」の間にに支出した費用のうち、開業準備のために特別に支出した費用を「開業費」として処理します。

具体的には、開業準備のために特別に支出した広告宣伝費、接待費、調査費、謄本や印鑑証明書の取得費用等に限られます。

創立費や開業費に入れられない支出

営業開始までの間に支出した費用であっても、全てを開業費として処理して良いわけではありません。

開業費に入れられるのは、財務諸表等規則ガイドライン36②によると、会社設立後から営業開始までに支出した開業準備のための費用となっています。

しかし、法人税法施行令14①2では、その範囲を「開業準備のために特別に支出した費用」に限定しています。

よって、人件費、水道光熱費、家賃 の様に毎月決まって支出される費用など経常的に発生する費用は、通常の経費科目を使って損金処理することになります。

開業前に車を購入した場合も、車両運搬具として資産計上します。

「資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用」は、除かなければいけませんので注意が必要です。

法人税法や法人税法施行令には次の様に書かれています。

法人税法第二条第二十四号(繰延資産)
 法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後一年以上に及ぶもので政令で定めるものをいう。

法人税法施行令第十四条(繰延資産の範囲)
 法第二条第二十四号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、法人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
 一 創立費(発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。)
 二 開業費(法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

~以下省略~

支出時に費用として処理する方法

「設立準備~営業開始前」までの支出は、設立第1期事業年度で全額費用とする方法です。

仕訳は、それぞれの支出に該当する科目で計上します。

通常の会計処理と同様に、資産計上すべき物については資産計上します。

会社設立日前の支出については、会社設立日にまとめて計上します。

会計上と税法上の相違点

会計上の考え方は、財政状態や経営成績を明らかにすることを目的としています。

税法上の考え方は、適正に課税することを目的としています。

どちらに焦点を当てているかによって、ネット上でも処理方法が色々と分かれてしまっています。

ザックリとまとめてみます。

会計上の考え方

原則として、創立費及び開業費は、支出時に全額費用として処理。

容認として、繰延資産として資産に計上し、会社設立日から5年以内(開業費は開業日から5年以内)の効果が及ぶ期間に渡って月割償却。

税法上の考え方

税法上は、任意償却(法人税法施行令64①一)。

開始事業年度において、全額損金算入することも可能。

自由に任意の額だけ償却してもかまわない。